営業ノート 【NO.4
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風に揺れるカーテン
みたいなガラス作れます?

風に揺れるカーテン
みたいなガラス作れます?
Project Name

大手小売本社オフィス

Place

愛知・名古屋市

Client

辻村久信デザイン事務所+ムーンバランス

問い合わせ

会議室をガラスで
囲みたいのですが

2023年5月

辻村久信デザイン事務所+ムーンバランスからメールが届く。

 

読めば、名古屋市内の高層ビルに大手小売業の会社の新オフィスを計画中で、
会議室、計11部屋をガラスのパーテーションで囲みたいとのこと。

 

11部屋というと…

 

 

ざっとガラス200枚!
創業以来の大型案件だ…

 

 

これは気合いを入れて臨まないと!

打ち合わせ

風に揺れるカーテン
みたいなガラス

早速打ち合わせに臨むと、図のようなイメージが提示される。

 

 


打ち合わせで提示されたイメージ

 

 

なるほど、風に揺れるカーテンみたいに表面が波打つガラスか。
こんなガラスで部屋を囲んだら、素敵なオフィスになるだろうな。

 

 

はい!イメージ掴めました!

 

 

表面にゆらぎの入ったガラスは前に作ったことがある。

 

ガラスの表面を波状に彫って、
さらに焼成するとイメージで提示されたようなガラスができるはず。
早速サンプル作成だ!

サンプル作成

兎にも角にも
サンプルが大事

イメージ写真を持ち帰って、思い浮かんだ
「ゆらぎガラス」のサンプルを作成してみる。

 

 


最初に制作したサンプル

 

 

カーテンみたいじゃん?
いい感じじゃん?

 

 

早速できたサンプルをデザイナーさんに送ってみると…
「まさにこんな感じ」と、一発OK!

 

順調すぎてちょっと怖い…

 

 

大まかなイメージが決まったので、今度は実寸サイズで
今回のパーテーションは、最大で幅10m×高さ2.6mのビッグサイズ。
サンプルをそのまま拡大すると、ゆらぎが激しすぎて
目が回りそうだったので、調整することに。

 

 


右端がサンプルを拡大した版下、左端が調整した案

 

 

拡大率を変えて、数パターンの版下を出力して確認。
密度にメリハリをつけた一番左の案に落ち着いた。
早速モックアップを作成してみると…

 

 


版下をもとに完成したモックアップ

 

 

うん、いい感じ!
次は実寸サイズの試作だ!

試作品制作

試作・試作・試作で1ヶ月

今回パーテーションを導入する会議室の床から天井までの高さは2.58m。

 

うちの窯で焼けるガラスは最大2.4m。
そこで指定サイズのガラスを焼くことができる強力なパートナー、
富山のS社さんに相談することに。

 

S社さんは日本最大級の「曲げガラス炉」を持つ曲げガラスのエキスパート。
パーテーションのコーナー部分はカーブにするから、この技術が欠かせない。

 

 

S社さん、頼もしい!
持つべきものはパートナー!

 

 

早速、実寸サイズで試作を始める。

 

まず、厚さ12㎜の分厚いガラスに、手作業で波状の彫り加工を加える。
それをトラックで富山のS社さんへ運んで焼成の工程へ。

 

つぎの日の朝7時に電話が鳴る。
「炉を開けたら、割れていました」
S社さんからの電話だった。

 

 


割れていたガラス

 

 

すぐに愛知から富山へ車を飛ばして、S社さんと打ち合わせ。
温度設定か?焼成時間か?
割れの原因を考えて、工法の変更を相談する。

 

しかしサイズは大きいし、ゆらぎのパターンも複雑。
一つ解決しても、また新しい不具合が起こる。

 

 

毎日、祈るような思いで
いくつものレシピを試す

 

 


表面にシワが出てしまったことも

 

 

結局、試作期間は1カ月も続いた。

最終仕様決定

究極のレシピ、完成!

あと1℃、あと1分変えたら、もっと良くなるかも。
とことん突き詰めたいけど、スケジュールも守らなきゃいけない。
時間との戦いが続き、ギリギリのタイミングで、レシピが完成した。

 

炉内の温度を細かく調整して、焼成時間や冷却時間を工程ごとに変え、
限られた時間の中でなんとか、答えにたどり着いた。

 

 

これが、究極のレシピだ!

 

 


焼成担当者のマル秘レシピ。企業秘密のためボカシで失礼します

 

 


本番と同じサイズの試作に成功

最終製品を制作

怒涛の200枚制作!

いよいよ最終製品の製作をスタート。納品まで3カ月。ギリギリだ。
S社さんと協力しながら、製作を急ピッチで進める。

 

先行完成品ができたところで、デザイナーさんがチェックのために来社。
ここでOKをもらえないと、ほぼやり直しになる。

 

 

心臓バクバク

 

 


デザイナーの辻村久信さん、チェック中

 

 

無事にOKが出た!

 

 

さあ、ここからは時間との勝負。

 

 

大型のガラスは、1日に3枚しか焼けない。
愛知で彫って富山へ運ぶのに半日かかるから、運搬時間も折り込んで計画する。
大型のガラスは1枚運ぶのに5人は必要。人数をそろえるのも大変だ。

 

黙々と頑張る彫り担当スタッフに、高級栄養ドリンクを差し入れて励ます。

納品

これはオフィスですか?
それともアトリエですか?

究極のレシピをもとになんとか200枚のガラスを制作。
現場に搬入し、夜中の施工に立ち合う。
ガラスの順番や天地が合うように指示を出して、現場に張り付くこと1週間。
ついにオフィスが完成!

 

こうして全体を見ると、一枚では分からなかった魅力が立ち上がってくる。
オフィスというよりアトリエのような空間だ。
こんなところで仕事するときっといいアイデアが浮かぶんだろうな。

 

中日ステンドアート史上、最も大規模で、最も難しい案件だったけど、
無事に納品できて、また一つ大きくなれた気がするなあ。

 

 

 

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バッグを引っ張りながら歩く営業マン