雪が積もった感じに
してください
雪が積もった感じにしてください
ダイワロイネット富山
富山・富山市
A設計
問い合わせ
ガラスで富山の風景を
表現したいのですが
2018年6月
A設計関西支社から問い合わせのメールが届く。
富山の駅前にホテル「ダイワロイネット」の設計をしているとのこと。
受付の背面に設置するガラス制作の相談メールのようだ。
コンセプトは既にできていて、ガラスで富山の風景を表現したいとのこと。
富山の風景というと・・・
黒部ダム?黒部渓谷?
それともホタルイカ?
一体、何だろう・・・
とにかく、一度打ち合わせだ!
打ち合わせ
提示された
一枚の写真
初回の打ち合わせに望むと担当の方から
「中日さんこんなことできないですか?」と一枚の写真を見せられる。
こ、これは・・・
黒部アルペンルート
雪の大谷!
富山では誰もが知る風景だ。
設計担当の方とホテルの支配人さんから
「富山の駅前にできるホテルだし、
出張、旅行で来たお客さん誰が見てもわかる風景で出迎えたいんです。
これをイメージしたガラス作れないですか?」
と聞かれる。
もちろんできます!
というか、もうできてます!
最初に思い浮かんだのは、過去に制作した
名古屋ビルヂングに入っている焼肉屋さん「肉や大善」のガラス。
どうやら、設計者さんも前にこれを見たことがあったようだ。
イメージは近いのだけど、
ガラスは厚みが増すと
緑になってしまう
雪の大谷はもっと白くて透明感がないとダメだ。
そこで思い浮かんだのが、
「JR名古屋ゲートタワー」「ALBION」で制作したガラスだ。
この案件では透明度の高い高透過ガラスを採用していて、
厚みはあっても緑にならず透明感を保てる。
これなら雪や氷の透明感を出せるかもしれない。
早速、手元にあったサンプルと事例を見ていただくと…
好感触!
設計者さんもホテル支配人さんもその場でイメージを掴んでくれたようだ。
大枠の方向性は、初回の打ち合わせの場で決まった。
さあ戻ってサンプル作成だ。
サンプル作成
シェルガラス秘話
早速、高透過ガラスでサンプルを作成することになった。
雪の大谷を表現するのは「シェルガラス」。
鏨(たがね)でガラスを削って、模様をつけていくという技法だ。
実はこの技法ができたのには裏話がある。
スーツケースにサンプルを詰めて運んでいると
ガラスが割れてしまうことがあるのだけど、ある日営業チームで、
「割れた模様の表情って綺麗だよね!」
と話題になった。
そこで意図的にガラスを削って製品化したのがシェルガラスというわけだ。
シェルガラスは
マイナスをプラスに転じた
ポジティブガラスなのだ!
さて、技法の紹介はさておき、
雪の大谷の質感に近づけるために、もう一つアイデアがあった。
それは、さらに奥行きを出すために裏側にミラーガラスを配置するという方法だ。
例のごとく早速サンプルを作ってみる
これ、雪積もってる感じ
出てるよね?
いい感じだ!雪の質感や積もった積層もうまく表現できた。
ちょうど来週は現場定例会議なので、
現場でサンプルを検証しよう。
現場で確認
あえて
透き通らないガラスを
現場定例会議で設計担当の方と確認すると、
思ったよりもミラーの映り込みが気になった。
フロントの背面の壁なので、パソコンや受付の方の背中が映るのは避けたい。
どうするか…
思いついたのは、二子玉川・髙島屋のブラストガラスだ。
ブラストガラスとは、砂を吹き付けてガラスに傷をつけて
透き通らないように加工した摺りガラス。
見えそうで見えない、気配だけ感じさせるガラスだ。
これをシェルガラスとミラーの間に挟めばどうだろう。
最終仕様決定
ガラスの三段構え
早速、持ち帰って
ブラストガラスを挟んでサンプルを作成してみる。
シェル、ミラー、ブラスト
ガラスの三段構えだ!
うん、これなら映り込みは防げそうだし、
雪の積もったイメージも損なわれていないし。さらに奥行き感もある!
あとは現場で金物のサイズを実測して、デザインを最終調整だ。
最終製品を制作
残り1ヶ月!
デザインとサンプルを再度クライアントさんに確認いただいて
無事最終仕様が決定。
早速制作に取り掛かる。
が、ここで問題発生!
シェルガラスは職人がガラスをノミで削るのだけど
サイズ約2.5m✕1.5mのガラスを削ろうとすると
真ん中に手が届かない!
急遽、ガラスを分割して制作することに。
幸い見た目には影響せず、一安心。
制作現場で予期せぬことが起こったが落ち着いて対処して
無事納期にも間に合いそうだ
納品
降り積もった雪で
迎えるホテルのフロント
大きなガラスだったから職人さんに7人に来てもらって設置。
納品日の前日に雪が降ったし、
ちゃんと納品できるか心配だったけど、無事に設置完了。
富山を象徴する風景をガラスで表現できるなんて誇らしい!